大会長挨拶
ゲノム医療推進法が公布・施行され、ゲノム医療を真に実現し、その恩恵を広く国民が享受できるようにするために、本学会の重要性がますます増しています。
ゲノム情報に基づき個別化医療・予防を実現する ー 全国で、ゲノム情報のある診察室を実現するには、真のラーニングヘルスシステムを構築することが求められています。患者に対しては、診療による遺伝子検査結果、臨床情報から、臨床的に有用なバリアントの情報を得て、ゲノム医学の知識として集約する。検査機関はこれを参照して遺伝子検査結果のレポートを作成し、医療機関の医師が妥当な臨床的な判断を下し、診断・治療ができるようにしなければなりません。市民に対しては、前向きゲノムコホートやリアルワールドのデータにより確立したエビデンスに基づいて、医療として個別化予防ができるようにしなければなりません。ゲノム社会の到来を目前にした今日、患者(患者団体)・市民、医療機関、検査機関、基礎・臨床医学から情報科学までの幅広い研究者、省庁、民間企業、プラットフォーマー、業界団体等のさまざまなステークホルダーが全体最適を目指して協力し、わが国のラーニングヘルスシステムを構築しなければなりません。そのためには、情報基盤、医療制度、法制度のさらなる整備も必要です。
クリニカルバイオバンク学会の年次大会となるシンポジウムには、医療から検査、シークエンス、バイオバンク、基礎・臨床医学まで幅広いアカデミアの研究者、企業が参加し、最先端の研究開発の発表・討論がなされています。本シンポジウムにおいても、わが国のゲノム医療推進法等の成立と今後から、住民の前向きゲノムコホートのバイオバンク、生体試料の品質管理、新たなデータ・バンク研究、国際連携、そして、病院のクリニカルシークエンス、がんゲノム医療、さらに、ゲノム情報に基づく医療実装に向けて、充実したプログラムとなっています。
皆様のご参加とご協力により、本シンポジウムが有意義なものになり、ゲノム医療を真に実現し、その恩恵を広く国民が享受できるようにするためには何をすべきかを共有することができればと考えております。
最後に、本シンポジウムの開催にあたり、多大なるご支援とご協力をいただいたすべての関係者に深く感謝申し上げます。
第9回クリニカルバイオバンク学会シンポジウム 大会長
荻島 創一
東北大学高等研究機構未来型医療創成センター
/東北メディカル・メガバンク機構ゲノム医科学情報学分野 教授